今回なかでもはまってしまったのが、このなかの3話目の「地図にない場所」。ははーんと鼻で笑われそうだが、やはりこういう話があるからこその少女漫画、少女漫画家だと思うのですよ。
吉田 秋生
小学館 (2014-07-10)
小学館 (2014-07-10)
以下ネタばれあり!
「金沢からきた新しいイトコと、迷子になりつつ、ある店を探す」
ストーリーとしてはこれだけなのに、情景と言葉が、少しずつ積み重なって、静かできらめくようなクライマックスへと導かれる。
どうしてこんなに胸がきゅんきゅんするんだろう!
どうしてこんな話がかけるんだろう?
何度も何度も思ってしまう。末っ子の恋の行方も、甘酸っぱいにやにやがあふれているが、今回のはもう、何度も読み返して、そのたびにこころが乙女スイッチオンになる。あぁ少女漫画だ。少女漫画だよこれ。少女漫画だああああ!!、と、一人で祭状態。
唐突にこの話があっても、ここまで感動はしない。「いちがいもんの花」の話で、イトコとの出会い、うつくしいもの、ものを作り出すことについてのエピソードが、それらとは真逆の、お金を巡る醜い争いとともに描かれるから、この「地図にない場所」のエピソードがまさに心に迫ってくる。
汚いもと美しいもの、悲しみと喜び、別れと出会い。大人とこども、その狭間。
連作短編集としてここまでの傑作。漫画でかつ、一つの小説を内包しつつ、自分がいままでにみた、空や海、緑、街の光景も鮮やかに思い出させてくる。
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